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2006年06月07日

次代に向かって迷走する日本の宇宙開発

 最近はすっかり顔出し仕事も増えてきて,認知されるようになってきた宇宙関係のライター・ 松浦晋也氏が日経BPでM-Vについて連載記事を書いていました。これに対し,感じたことをつらつらと。

 まず,個人的な意見として,M-Vは技術として維持しなくてはいけないものであり, 安易な流用による改造が悪い方向に行くであろうという松浦氏の意見には全く同意です。ただ,M-Vが内之浦でしか運用できない,「最適化」 したものであるからこれも維持すべき,という点は疑問ですが。これはさすがに使い勝手が悪すぎです。

 そして,開発力が衰えていることは確かだと思います。長い間,「開発」を行っていないのですから。が,「筋が悪い」設計なのは, 政治的思惑もあるかもしれませんが,「予算のためのプロジェクト」にしたためとも考えられます。どちらかといえば,こちらが主で, 政治的駆け引きがそれに乗っかってしまった,と思いたいです。

 宇宙関係三機関が統合して今のJAXAができたわけですが,現時点において, お世辞にもこれが有機的に活動できているとは到底思えません。最近でのもっとも顕著な事例は, 昨年度末に連続して打ち上げられたロケットです。H-IIAロケットの短期間での初めての連続打ち上げと, それと平行して行われたM-Vの打ち上げ。H-IIAの8号機は打ち上げが一週間延期されました。そのため, 次に予定されていた9号機の打ち上げが一週間後ろにずれました。そして, まったく別ラインで準備が進められていたM-Vもなぜか一週間遅らされました。ロケットの形式も,射場も,作業員もなにもかもが違うのに, なぜか遅れました。明確な理由はわかりませんが,「ONE- JAXA」な動き方でなかったのは明確でした。

 H-IIの開発から30年。M-Vの開発からもかなりの年月がたちます。 これらの開発時に一線で働いていた方たちは続々とリタイアされていきます。それとともに,技術も失われつつあります。 まだまだひよっこの自分ですが,「開発する技術」と「量産する技術」は全くの別物だと感じています。そして,「開発する技術」という点では, H-IIおよびM-V以降まともに動いているものはありません。いまこのときに「開発する技術」を実践した方から受け継がなければ, また一から積み上げていくことになります。ましてや, 一度創り上げたものを失ってしまえばおそらくもう二度と同じものを創り出すことはできないと思います。 それが今の日本の宇宙開発事業のおかれた状況だと感じています。

 JAXAの技術者も同じことを感じているはずです。そして,その焦りがM-Vの「改良案」となってでてきたと思います。

 今,JAXAは次代へ向かう方向を探して迷走しているように感じます。そして,どうしてもネックになってしまうのは予算のようです。 新規の開発プロジェクトには大きな投資が必要となります。国の財政がお世辞にも豊かとはいえない状況において,あれもこれも, というわけにもいきません。取捨選択が必要になります。その「選択」をできる人がどこにもいないのではないでしょうか。 強力なリーダシップを持って,全員の視線を一方向に向けることのできる旗振り役が。

 技術開発のためのプロジェクトではなく,予算のためのプロジェクトでは,本当にお金の無駄遣いになってしまいますよね。

 

 …う~ん,やっぱりうまくまとまりませんでした。もうちょっと自分の中で練らないとだめですね…。

 低コスト化で岐路に立つM-Vロケット (1) 表面化する日本のロケット開発力の衰退

 低コスト化で岐路に立つM-Vロケット (2) 失敗が生かされない設計の裏に旧組織からの確執

 低コスト化で岐路に立つM-Vロケット (3) 問題の根本は情報収集衛星による予算不足

 低コスト化で岐路に立つM-Vロケット (4) 顧客である衛星のために欠点補う改良を

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コメント

> ロケットの形式も,射場も,作業員もなにもかもが違うのに

「作業員」が必ずしも違わないからです。
そこまで日本の宇宙の規模は大きくない。

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