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2001年07月26日

【乙一】天帝妖狐


「天帝妖狐」
著者:乙一
イラスト:
集英社文庫
bk1

 JUMMP J-Booksで出ていたものを文庫におろしたものの二冊目。「A MASKED BALL」と、表題作の「天帝妖狐」の2本収録。今回は死体が出てこない分ホラー色も弱め(笑)
 「A MASKED BALL」は、学校で何気なく見るトイレの落書き、そこから始まる奇妙なコミュニケーションが引き起こすちょっとした事件の話。これまたミスディレクションがうまいこと。人物の配置が絶妙で、結構だまされました。落書きコミュニケーションズの5人のうち、「V3」氏が最初誰だかわからなかった。読み直して、納得。最後の終わり方が、何とも心地よく、決して笑い話ではないのだけど、ちょっと口元に笑みが浮かぶ。そんなエンディング。
 「天帝妖狐」は、ホラーよりはオカルトかな? ネタは誰もが一度はやってみた事があるであろう「こっくりさん」。物語は二つの視点で、片方は手紙の体裁をとっている。出だしが終わりの時からさかのぼるので、そこもまた雰囲気を醸し出す。「何が起きたのか、わくわく」、とそんな感じ。これはミステリーの手法かな。特に謎掛けも何もなく、メインは中心の二人の心情の動きといったところか。これまた最後がなんとも、いい。ちょっとセンチになってしまう、そのもっていきかたがニクイですな(笑) 結局最後まで「こっくりさん」の正体に明確な答えが与えられないんですけど、ちょっと気になりますよねぇ。答え、あったのかな、ひょっとして……。
 「夏と花火と私の死体」に比べれば、軽めの話だけど、中身は十分。乙一氏の長編も読んでみたいと思うけど、短編だからこそ、言葉が多くなくていいのかも。

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