【秋山瑞人】イリヤの空 UFOの夏 その3
「イリヤの空 UFOの夏 その3」
著者:秋山瑞人
イラスト:駒都えーじ
電撃文庫
【bk1】
電撃hpにて連載されていたモノを加筆修正した3巻目。今回は書き下ろしなし。代わりにイラスト担当駒都氏によるキャララフが掲載されている。
「無銭飲食列伝」 女の意地と意地のぶつかり合い。なににつけても不器用なイリヤと、なんだかんだと姉御肌の晶穂の世紀の一戦。ただの大食い競争が、なぜ秋山フィルターをかけるとここまで壮絶なモノになるのか、疑問ではあるけれども、それが楽しみなわけだから。惜しむらくは文中イラストがまるでないこと。とくにこのエピソードに関しては、ショッキングなイラストがhp本誌上にはあったため、かなり残念。そして、ヤローどもは馬鹿炸裂。それでも、「あぁ、そーだったなぁ」と懐古してしまう(苦笑)
「水前寺応答せよ」 男子であり、男であり、そして漢である。そんな前後編。角が取れて、ようやくスムーズに流れそうになった日常の、その目の前に立ちはだかる巨大な山。そして事態は急降下。じわりじわりと包囲網が築かれていく息苦しさと、じれったさにもだえる最後。次に待ちかまえるのはハッピーエンドか、バッドエンドか……。ここで止めたらまるでEGFのよ……
「ESP.の冬」 前水前寺テーマのエピソード。水前寺哲学の講義がなかなかおもしろい。こういう理屈、よくまぁ考えるなぁ、と。その底の知れない水前寺邦彦という男、どういう大人に成長するのか、全部見てみたい気がする。このころが一番平和だったのかもしれない、とそんなことも思ってしまう、直前のエピソードと明らかに異なる雰囲気が和ませてくれる。
次から転がり落ちる展開が繰り広げられるであろうことは確かでしょう。そして、その後にはEGFが控えている、と思いたい……。