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2004年02月14日

【松浦晋也】国産ロケットはなぜ墜ちるのか



国産ロケットはなぜ墜ちるのか表紙


「国産ロケットはなぜ墜ちるのか H-IIA開発と失敗の真相」
著者:松浦晋也
日経BP社

 笹本祐一氏とともに、たびたび各国のロケット打ち上げの取材にいき、たまに日経Biztechなどで現在の日本の宇宙開発に関しての記事を載せるノンフィクション・ライターであるところの松浦晋也氏の新刊。中身としては、日経Biztech等の記事を核にして少しふくらませた、日本の宇宙開発、ひいては科学技術政策全体の持つ問題点を指摘したものになっている。

 著者が「ふじ計画」に携わったり、多少なりとも仕事とは別の側面を持ってロケット打ち上げの取材に赴いていることからも、主張に宇宙開発推進の偏りがあるのは致し方ないところですが、ほかのマスメディアにおいて、このように詳しく、実情を含めた報道がなされていないことから、貴重な情報源であることは確かです。

 昨年11月のH-IIA六号機、「みどり2号」、「のぞみ」、「MTSAT」などの失敗を中心に、日本の宇宙開発における問題点がどこかという話。大きくいってしまえば三つ。
 
 「政治(政策)」と「組織」と「対アメリカ」

 とはいえ、結局のところ「政治」がすべてなのかもしれません。理工系的教養が皆無の政治家・官僚によって企画・立案・遂行される自我なき宇宙開発政策。「対アメリカ外交」のあおりを食って生け贄にされる「国際協力」という名の宇宙開発。霞ヶ関の思惑のみを反映した旧NASDAと新生JAXAの組織構造。
 トラブルのすべてを予算不足のせいにすることはできませんが、限られた予算でも、少しの理工系的教養と芯をもった政策と常識的にフレキシブルな遂行組織とがあれば、今現在の状況は全く変わっていたように思います。

 本書では最後に第二のJAXAを以て、競争原理を取り入れることを一つの回答としてあげています。理想をいえば、完全民間の政治的要素がいっさい関与しない営利企業としての組織を立ち上げ、JAXAとの競争を行うのが一番だと思います。難しいことでありますが。いずれにしても、企画立案から予算・物資調達、研究・開発、製作、運用までを一手に行える組織と、それを機能的に動かすことのできるリーダーがあれば、確かにおもしろいことになっていたと思います。

 これは一朝一夕に改善されるほど浅い問題ではなく、ことは日本を導く一番上の機構にある非常に根深い問題であることは確か。自分たちにできることは、夢を失わず、次代に夢を見せられるように、できることを精一杯やっていくことしかないんでしょう。

 子供が夢を、未来を見なくなったら、「日本という国」のこれからの発展はあり得ないでしょうから。


関連: 松浦晋也×笹本祐一対談『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』

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