« paraglider | メイン | space »

 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12  | 全部読む

2001年10月06日

【甲田学人】Missing 神隠しの物語


「Missing 神隠しの物語」
著者:甲田学人
イラスト:翠川しん
電撃文庫
bk1

 電撃ゲーム小説大賞最終選考からのデビュー組。「E・G」の秋山さんといっしょ。中身はオカルト色のかなり強いファンタジー。なのだけど、ワタシにはファンタジー色の強いミステリーに思えた。それほどミステリーを読んでいるわけでもないから、違うかもしれないけど、話の展開の仕方が何となくそういう印象。まず答えとしての事実があって、それに対して考察を加えて、解答にたどり着く過程を見せるというか。本文にもある「科学的考察」を実践している感じ。
 ネタは「神隠し」。どこの神話・民話にも見られる逸話に対して一つの見解が与えられているのかも。とにかく本文の情報量は多い。ただ、全体的に心理面、しかも少し黒い方がメインにでてくるからその辺少し重いかも。メインで動くのは5人の学生と問題の少女。それぞれに、積み上げた物が見え隠れするので存在感もちゃんとある。欲を言えばもうすこし問題の少女を掘り下げてほしい感じもするけど、そうすると雰囲気壊れちゃうかな。
 ちょっと哲学的な部分も多いけど、結構刺激になる一冊。魔王陛下のお言葉は参考になります。「思考停止に安住するな」とはちょっと耳が痛いですけどね。

【川上 稔】機甲都市 伯林5 パンツァーポリス1943 Erste-Ende


「機甲都市 伯林5 パンツァーポリス1943 Erste-Ende」
著者:川上 稔
イラスト:さとやす
電撃文庫
bk1

 第二期都市シリーズ最初のシリーズ、ついに完結編。
 だれだ、都市シリーズ入門用とかいったのは! 川上節全開で最初っから最後までトバされて、ワタシにはついていけませんでした。出てくる人が多すぎです。ルビ振り文字が読みにくいです。中途半端に伏線読もうとするからよけい混乱します。結局、最終的に何がどうなって、どう落ちついたのか、ちっともわかりません。読後の余韻なんてあったもんでもないし。というわけで、一回読んだくらいぢゃ、ちっともです。がんばって5冊再読します、そのうちに……。
 結論。「初めての都市シリーズ」には向きません。えぇ、けっして。もちろん、そーでしょうとも。秋山氏とはまた違って、固有の世界を展開してますが、さすがに今回はワタシの手には余るものでした。もう少し修行してきます……。

【甲田学人】Missing2 呪いの物語


「Missing2 呪いの物語」
著者:甲田学人
イラスト:翠川しん
電撃文庫
bk1

 電撃で賞を取ったばかりの新人さん、早速の二作目。「都市伝説」を中心に据えたオカルトファンタジー(らしい)。今回のネタは「憑き物」と「ソロモンの鍵(魔術)」。
 前回が「魔王様」こと空目くんが主役だったけど、今回の主役はミステリアスな亜紀さん。魅力的なキャラが多いのだけど、今回はちょっと無力カップルがあまりにも非力。前回はいいクッションになってくれたけど、今回は少し力不足だった模様。ここら辺は惜しいけど、他は大丈夫。ネタの濃さはぴかいちだし、それなりに引きも強い。ただ、ちょっと著者の主張らしいところが多くなってるのがちょっと気になるかな。電撃には珍しいテイストなので、今後もこの濃さをキープしつつがんばってほしいところ。しかし、この挿絵はなんとかならんものか。さすがにすこし不釣り合いかな。もちっと重めな絵にしてほしいものですわ。

2001年10月05日

【秋山瑞人】イリヤの空、UFOの夏 その1


「イリヤの空、UFOの夏 その1」
著者:秋山瑞人
イラスト:駒都えーじ
電撃文庫
bk1

 電撃hpに連載されていたものが文庫化。プラス短編一本。秋山氏にしては珍しく現代物。だけど、舞台設定は平行世界(パラレルワールド)? 時期が時期だけに、結構作中の状況がしゃれにならないような気もしますが。話の中身は、本人も言ってるように「UFO○波」が全てでしょう。アレのキャラを秋山テイストにするとこんな感じ、かと。
 全体的に周りは常に全力疾走。特に約一名(笑) 肝心の中心人物はかたや天然、かたやスイッチ式。読んでてほのぼのすることも多いけど、決着の付け方がどうなるのか、すごく楽しみ。秋山氏は泣き所を入れるのがおじょーずなので、そのあたりも注目か。でもなー、「正しい原チャリの盗み方」はまずいと思うんだけど、いいのかな? いや、おもしろいんだけどね。とりあえず、一月あけて出るその2とその後続くであろう続刊が早期に確実に出版され、順調にEGFに移行されることを、切に願うばかりである(笑)

【秋山瑞人】E・Gコンバット2


「E・Gコンバット2」
著者:秋山瑞人
イラスト:☆よしみる
電撃文庫
bk1

 ルノアは吹っ切れ、訓練生もやっと一人で歩けるようになった頃、訓練の関門が二つ。筆記試験と実地演習という名の「実戦」。筆記試験では、どこの学校でも見られるような戦闘があり(笑)、一方で宿敵ラセレーナの悪巧みが引き起こす悲劇の演習。「生命」を天秤にかけざるを得ない指揮官の苦悩が痛々しい。前巻よりもさらにパワーを上げた文章は、後半に行くにつれてヒートアップ。何より今回かっこいいのは双脚砲台GARPくん。最後までかっくいー。漢ですなー。
 ちらりと根底にあるであろう伏線も出てきて、ますますスピードアップしていく2巻目でした。

【秋山瑞人】E・Gコンバット3


「E・Gコンバット3」
著者:秋山瑞人
イラスト:☆よしみる
電撃文庫
bk1

 さてさて、生きるか死ぬかの3巻目です。今回の主役はD+……いやいや、恋する乙女、カデナ・メイプルリーフ伍長でしょう。序盤重く、中盤勢いよく、笑いあり、終盤さらにさらに重く。にくい演出です。
 宿敵からの奇妙な一本のメールから、月と地球の情報格差が激しいことを知るルノア。身の回りの雰囲気から不吉な予感がひしひしと。一念発起して、脱走。なぜか部隊の5人+1人とともに地球へ。そこで見たモノは……。
 最初のおちゃらけた雰囲気はどこへやら。事実に近づくにつれてどんどこ重くなっていきます。「シナリオ13」、「緑に光る月」、「ずたずたの衛星網」。猿どもはどこから来てどこへ行くのか、その答えが次のFinalで。ここまでくると消化不良かも。早く続きを読ませてクレー。

2001年09月09日

【鷹見一幸】時空のクロスロード3 バースディは永遠に


「時空のクロスロード3 バースディは永遠に」
著者:鷹見一幸
イラスト:あんみつ草
電撃文庫
bk1

 電撃hp読者アンケートで好評を博して、文庫になったシリーズの完結編。
 時間軸はいっしょだけど世界情勢が違うという平行世界を舞台にしたお話。そこでは世界中に蔓延した致死率、罹患率の非常に高いウィルスのせいで社会が崩壊。生き残った少数の大人と多くの子供達がいくつかのキャンプで暮らし、無法状態になっている中において、その安定を破壊から得ようとする暴徒たちとの戦闘が繰り返される。そんなところに変なじじいにもらった機械で「平和で安穏」とした世界から飛んでくる主人公達。そこから変わっていく世界の因果律……。
 決して特殊な能力を持った人間ではなく、シリーズを通して食べ物だけで周りを変えてしまうという、単純で根本的ではあるけれども、それだけに効果的な干渉の仕方。真ん中の2巻目はちょっとたるんでしまったけど、今回の3巻目は最後にしっかりと締まっていい感じ。自分たちが今、いかに「危うい平和」を享受しているのか、そしていかに「無力」であるか、少し身につまされるものもあるけれど、前向きな結末であることで気持ちよく読み切ることが出来る。
 しかし、このシリーズを読んでいると無性にお好み焼きやホットケーキ、カレーなんかを食べたくなるのはつらいかなー。それだけ描写に気合いが入っているのだけど。直前に出た「でたまか」のおわりがおわりだったので少し不安だったものの、こちらの方はきれいにまとまって終わってくれたようです。

2001年09月04日

【鷹見一幸】でたまか アウトニア王国奮戦記2 奮闘努力編


「でたまか アウトニア王国奮戦記2 奮闘努力編」
著者:鷹見一幸
イラスト:Chiyoko
角川スニーカー文庫
bk1

 電撃の方で「時空のクロスロード」を書いていた鷹見一幸氏の、スニーカー文庫での新刊。背景にはいろいろといわくのある作品のようですが、中身は典型的なスペオペ。

 金も地位もない貧乏貴族だけど、軍の士官学校では成績抜群。だから坊ちゃん貴族に恨まれて、配属先は辺境地区へ島流し。そこで勃発する戦闘をなんとかかんとかしてのりきっていく、とまあそんな話。設定その他はほかのスペオペと同じ。その点で半使い古された雰囲気ではあるものの、それが気にならないくらいに魅力的なキャラクター多数。今回はまさに「いい性格」な人たちの大活躍。人から地位や名誉や財産なんて、世間一般の評価を取り除いた先に自分に残るものは何なのか、その価値とはいかほどか、なんてちょっと身につまされるテーマもありそうだけど、渦中であるところの貧乏貴族はその点微笑ましい。「開いてしまった戦端をどう収束させるのか、そして渦巻く人間模様はいかに?」ってな引き際でやっぱり次巻が気になる終わり方。売れなければ次はないらしいけど、2冊目が出たからきっと大丈夫だと思いたい。

2001年08月28日

【岩本隆雄】ミドリノツキ(上)


「ミドリノツキ(上)」
著者:岩本隆雄
イラスト:小菅久実
朝日ソノラマ文庫
bk1

 「星虫」の岩本さん、待望の新刊。舞台は日本だけど、「星虫」世界のお話ではなく、別のお話。
 主人公は男子高校生。学校の自習時間、居眠りをしていて遭遇した不思議な夢と、それから起きる世界規模での騒動。先史文明の遺産なんて物が現れて、世界中大パニック。ただの高校生が、気がついたら、なんだか騒動の一端に片足をつっこんで……ってなところで、上巻終了。はっきり言って、これからどうなるのか、気になってしょうがないです。出てくるキャラクター一人一人の背景がたっぷりありそうで、上下巻ではもったいない気もする。岩本さんらしい地球規模でのスケールの大きさや、ちょっとした問題提起チックな部分もあり、考えさせられる。上巻で張り巡らせた伏線とギミックをどう決着づけるのか、期待大。それにしても、岩本さんの書く高校生って言うのは、なんかこう、いいですな。青春してるけど、そんなに青臭くもなく。好感が持てます。

【岩本隆雄】ミドリノツキ(中)


「ミドリノツキ(中)」
著者:岩本隆雄
イラスト:小菅久美
朝日ソノラマ
bk1

 今度は十年も待たされなかったようで(笑) しかし、上下巻のはずが、一冊増えての中巻です。
 上巻でちりばめられた伏線にそれなりの回答を与えつつ、大量のギミックを違和感なく消化していくのはさすがな感じ。読み始めると止まらないのが難点かな。もちっとゆっくり楽しみたい、というのは贅沢か。
 今回の主役はなんと言ってもタワーバード君でしょう。いいキャラしてます。こいつの立場はワタシにはまだよくわかりきっていませんけど、主人公とはいい(漫才?)コンビになりそうです。
 次で「選ばれた人」と主人公とがどう絡んでいくのか、どう決着するのか、非常に楽しみです。順調にいけば、10月には下巻が読めるらしいので、それに期待して待ちましょう。

【吉田 直】トリニティブラッド Reborn on the Mars2 熱砂の天使


「トリニティブラッド Reborn on the Mars2 熱砂の天使」
著者:吉田 直
イラスト:THORES柴本
角川スニーカー
bk1

 「ノイエバロックオペラ」なんつー、訳のわからないジャンル付けされた、「大災厄」後のどこぞの世界の吸血鬼対人類のお話、長編版2作目。某所では、某マンガのパクリ論争も勃発していたりする作品(笑)
 長編前作でゲストヒロインだと思っていたシスター・エステルさんが今回からどうやらレギュラーヒロインとして登場。世界に対する解答とともに、今後は恋愛沙汰も少しは絡んでくるご様子。個人的には、赤毛は駄目ですが、強気な人は好みです。文章なんかには特にこれといった特徴もなく、ふつうに読めます。登場人物の肩書きは少し読むのつらいですけど。この作品の場合、挿絵の占める割合がかなり大きいと思われ、これがなければ魅力半減かも。ちょろりちょろりと伏線も明らかになりつつあるので、これから少し重く運ぶんでしょう。対する「RAM」(短編集)の方は、結構軽いノリなので、ワタシはこっちの方が好きなんですけどね。

【岩本隆雄】星虫


「星虫」
著者:岩本隆雄
イラスト:鈴木雅久
朝日ソノラマ文庫
bk1

 ある日、宇宙から降り注ぎ、人の額に寄生した不思議な生き物「星虫」。人間に対して「有害」なのか「無害」なのか、そのとらえ方の微妙な差違と、それによって生じる周辺との摩擦。「ふつう」であるということの意味は? 中高生の時に誰もが描く将来への「夢」。それを取り巻く現実。そんな対比が妙に生々しく、また気持ちよく書かれている話です。また、今の地球環境を取り巻く様々な状況に対する、一つの考え方も書かれています。
 将来に悩んでいる人、現状が行き詰まっている人、そんな人たちに一番よく効く特効薬だと思います。
 これを読んだ後には、必ず何かが残るはず、そんな小説です。中高生の人たちにはとくに読んでほしい一冊ですね。

【小野不由美】華胥の幽夢 十二国記


「華胥の幽夢 十二国記」
著者:小野不由美
イラスト:
講談社文庫
bk1

 十二国記シリーズの最新刊。短編集です。舞台は戴・漣・慶・才・奏・芳の各国。さすがに一気にたくさん出てきて混乱気味。でも、陽子や楽俊、泰麒、利広と結構主要なメンバーが出てきて楽しかったです。特に最初の二人のやりとりが。やっぱりこの二人が一番見ていておもしろいかなー。
 なんとはなしに、世界全体が動き始めて様な印象を受けたんですけど、微妙に時間軸が錯綜しているからひょっとすると勘違いしている部分もあるかも。ちょっと人が一気に増えて混乱気味だし。しかし、気づいたらどっぷりはまったなー。

2001年08月09日

【渡瀬草一郎】パラサイトムーン2 鼠達の狂宴


「パラサイトムーン2 鼠達の狂宴」
著者:渡瀬草一郎
イラスト:はぎやまさかげ
電撃文庫
bk1

 電撃大賞出身で、大賞受賞後の最初のシリーズ、2冊目。ネタ元は「クトゥルー神話」とか、そのあたりだと思うけど、人外の能力を持つ人たちが、その能力の元となる「神様」を狩ったりなんだりしたりする過程で生じる各種騒動。そんな話(どんなや?)。
 一巻目、挿絵といい、中身といい、非常に萌え要素を全面に出し、話の根本になる「迷宮神群」とかのあつかいもなんだかなーで、今ひとつだったのが、二巻目でかなり改善。前回、勢いに乗れなかったぶん、今回は結構全体的にかっちりしていて読みやすかった。最後のもっていきかたも満足。ネタから考えても、そんなに萌え要素を出す必要もない、というかむしろ出してほしくない。今回、かなりの量の神様の名前が出てきてしまって、能力その他が混乱気味なので、ちょっと整理がほしいところかも。
 安定した今回から、さらにどう発展するのか、すでに三冊目も校正段階のようなので、期待大。一巻目のカップルがしっかり出てくるそうです。

2001年08月08日

【大倉らいた】坂物語 ~キミを見つけた冬の朝


「坂物語 ~キミを見つけた冬の朝」
著者:大倉らいた
イラスト:甲斐智久
角川スニーカー
bk1

 センチの二人で書いている「純愛・学園ロマンティックシリーズ」の三冊目。
 毎回、いくつかの地方が舞台となる短編集なので、地方在住の人にはけっこううれしいかも。今回のは、金沢、高知、鳥取、尾道の四カ所。数が多い分、少し中身は薄目で、ちょっとネタにも苦しくなってきているのか、今ひとつ。次で終わりらしく、そろそろまとめの気配もあるのでそのせいかも。センチの時みたいに「切なさ炸裂」(笑)みたいにはならないから、今ひとつ盛り上がりに欠ける。
 まあ、スニーカーらしいっちゃらしいシリーズです。

全部読む |  1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12