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【神坂 一】クロスカディア1 月メグル地ノ来訪者タチ


「クロスカディア1 月メグル地ノ来訪者タチ」
著者:神坂 一
イラスト:谷口ヨシタカ
富士見ファンタジア文庫
bk1

 「あの神坂氏の新シリーズ、富士見で登場!」という感じでしょうか(笑) 主人公であるところの男の子のところに、突然転がり込んだのは記憶のない女の子、という「いわゆる萌え路線(自称)」なシチュエーションです。……が、失敗してます。神坂氏には萌え路線は難しいようです。
 全体としての世界観はスレイヤーズに近いようです。新理論の魔術も例のごとく登場し、その辺の設定も「らしく」できているのはさすがでしょうか。今回は一巻ということで、たぶんにキャラ・世界観紹介で終わってしまって、話がちっとも見えてきませんが、そこいらへんはこれからでしょう。敢行ペースの速い人ですから、すぐに次が出る、でしょう。
 それにしても、ヒロインの女の子。どうしてもイメージがリナ・インバースに脳内変換されてしまうのは仕様がないんでしょうかね?

【長谷敏司】戦略拠点32098楽園


「戦略拠点32098楽園」
著者:長谷敏司
イラスト:CHOCO
角川スニーカー文庫
bk1

 第6回スニーカー大賞金賞受賞作。今後に期待できる新人かもしれない。
 SFと銘打っているモノの、出てくるモノがSFチックなだけで、全部がSFしているわけでもなく。設定云々なんかは考えずに、とにかくイメージを大切に読みたい一冊。頭に情景が浮かべば、3倍以上は楽しめるものだと思います。雰囲気は秋山完氏に似ているかも。胸にくるものがある、そーゆー作品です。うまく伝えられませんが、兎に角読んでください。

【一色銀河】若草野球部狂想曲3 スプリング・ステップ


「若草野球部狂想曲3 スプリング・ステップ」
著者:一色銀河
イラスト:美鈴 秋
電撃文庫
bk1

 「野球小説」最終巻。野球と女の子が絡むと必ず出てくる「性別の壁」がネタ、かなー? やっぱり本編半分以上は野球。それ以外に絡ませるモノは、恋愛関連といきそうなモノなのに、なぜかやっぱり盛り上がらず、結局そのあたりの結論はちっともです。中心の「怪物」君が野球バカであることが大きな原因と思われます。これに恋愛要素を求める方が間違っているのかもしれない(笑)
 綺麗な終わり方をしているのだけど、結構な人数が出てきた割に、取り扱いのぞんざいな人間が多すぎるので、今度出るという外伝での活躍を期待したいところ。男性陣の影が薄くて、かわいそうすぎるから。

【一色銀河】若草野球部狂想曲 サブマリンガール


「若草野球部狂想曲 サブマリンガール」
著者:一色銀河
イラスト:美鈴 秋
電撃文庫
bk1

 ライトノベルでは珍しいかもしれない野球モノ。いろんな意味で濃い作品かも。話自体は、廃部寸前の野球部が一人の「高校野球の怪物」によって救われるという、ありがちなシチュエーションではある。だけど、その野球部が男女混成という特殊なものであることが、この話のミソ、かな。中心にその「怪物」だけを置かずに、下手をすればヒロインでしかない女の子をもう一つの中心に置いたのがいいのかも。途中のネタも、結構笑える。野球マンガをよく読む人なら、中に出てくるパロディギャグも結構おもしろい。ただし、野球を見ない人には全然わからないネタではある。マニア受けといえばそうかも。はまれば十分楽しめる、そんな感じです。

【山下 卓】BLOOD LINK 赤い誓約


「BLOOD LINK 赤い誓約」
著者:山下 卓
イラスト:HACCAN
ファミ通文庫
bk1

 好評らしいシリーズの二冊目。なんだけど、表題に番号も何も振っていないので、間違って二巻目から手に取る危険が大きいという、ちょっと問題ありなシリーズ。この辺はつぎから改善してもらいたいところですが。
 前作は、ワタシにはちょっと痛すぎてきつかったのですが、なぜそう感じたのか、今回主人公であるところのカズシ君の推論を聞くに至って何となく納得。前作の被害者があまりに「綺麗」(←外でなく内面)すぎたと言うことが大きいかな。
 シリーズ全体のイメージが「灰色の肌寒い晩秋」みたいな感じを受けるので、兎に角トーンは暗い。今回はカズシ君の葛藤がメインで、前みたいにスプラッタではないです。でも、最後の展開はやっぱり痛いです。願わくば、幸せな結末であることを。

2001年11月21日

【渡瀬草一郎】パラサイトムーン3 百年画廊


「パラサイトムーン3 百年画廊」
著者:渡瀬草一郎
イラスト:はぎやまさかげ
電撃文庫
bk1

 「クトゥルー」をネタにした現代伝奇モノ、になるのかなー? かなり独自色は入っています。
 今回の話は、前巻の裏で動いていた出来事で、中心は一巻の二人。とは言っても一人は最初だけですが。全体的にキャラクターが安定してきたのか、浸って読めました。前回ちょっかいを出してきた「エスハ」が今後どう絡んでくるのか、そこいらあたりが注目か。ただ、今回のオチがちょっと安易すぎる気がしたのはワタシだけかな。この点の収束をどうやるのか、ここも楽しみ。
 難点だった挿絵ですが、本文中の状況説明的な挿絵がなくなり、章扉絵だけになったのがかなり好印象。これだったらあまり気にならないし、うまい使い方ではあると思われます。女の子、みんな同じ顔に見える時ありますけどね。
 次はタイムリー(?)な陰陽師ネタの続刊だそうです。

【秋山瑞人】イリヤの空、UFOの夏 その2


「イリヤの空、UFOの夏 その2」
著者:秋山瑞人
イラスト:駒都えーじ
電撃文庫
bk1

 秋山氏初の二ヶ月連続刊行が無事成されたイリヤの二冊目。その1と同様、hp誌上連載分に加筆修正を加えたもの+短編「死体を洗え」という構成。今回はその1よりも加筆修正部分も多め。その分削られたものもあるけど。余裕のある人はhpも買って読んでみるといいかも(と、宣伝してみる)。
 「正しい原付~」はなんと言っても、浅羽妹・夕子とハイスペック水前寺とのやりとりがなんとも。いいコンビですな、この二人。「しあわせでしたーーーーーーーー」が好きです。
 「十八時四十八分~」は一部で物議を醸した、偉く綺麗らしい浅羽母。これに尽きるかと。浅羽ファミリーはなかなかに魅力的です。肝心の浅羽君は今ひとつパッとしませんが。
 「死体~」に関しては、コメントしづらい。というかよくわからなかったです。
 この「その2」でかなりの人が動き、秋山氏特有の、わざと説明しない状況や単語群が増えてきたので、裏を読もうとするといくらでも妄想がかき立てられるという、そんな感じ。しかし、そんな裏を読まなくても、秋山節であるところの「文章マジック」をとくに「十八時~」では楽しめるのでこれだけでも十分では。
 何とはなしにバッドエンドが予測される「イリヤの空」、夏はまだまだ続くようなので続きに期待しましょう。
 「根性ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
  「根性ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
   「根性ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」 (笑)

2001年11月19日

【茅田砂胡】レディーガンナーの冒険


「レディーガンナーの冒険」
著者:茅田砂胡
イラスト:草河遊也
角川スニーカー文庫
bk1

 世界観はふつうのファンタジーなのだけど、どうも生態系が入り組んでいるご様子。亜人種がしこたま出てきます。その辺の社会問題を絡めつつ、結構濃いキャラクターたちが暴れておりました。キャラクターの端々に少女様向け表現が見受けられるのが少しつらいところですが、なかなかに魅力的な連中という印象。ただ、ドラゴンくんの登場のさせ方は、ちょっと安易な気も……。しかし、話全体の勢いが良いので、一気に読めてしまいました。主人公のキャサリン嬢はこれからもいろいろとやってくれそうな感じなので、是非是非続編を望みます。

【岩本隆雄】イーシャの船


「イーシャの船」
著者:岩本隆雄
イラスト:草薙琢仁
朝日ソノラマ文庫
bk1

 「イーシャの舟」は「星虫」、「鵺姫真話」の流れをくむ一冊。これで復刻も一段落。この時間軸でのはなしも一通り終了といった感じでしょうか。「星虫」のきっかけとなる宇宙船にまつわるお話。「嫌われ者」の本心というやつが、最後にどかんとぶちかまします。思わぬ人が思わぬ形で出てきていたようなので、あとがきにあるようにもう一度一通り読み直すことにします。新たな発見が、きっとあることでしょう。この一連の三冊は、本当に中高生あたりに一番読んでほしいものだと思います。出てくる人たちみんなが、やっぱり輝いていますね。生き生きしているというか。こんな生き方してみたいです。個人の希望としては、同じ時間軸での話を次も期待しています。また寝太郎にならないことを切に願います。

【秋山瑞人】E・Gコンバット


「E・Gコンバット」
著者:秋山瑞人
イラスト:☆よしみる
電撃文庫
bk1

 ルノア・キササゲ。21歳。北米総司令部最年少大尉。生成晶撃破数歴代7位。月より舞い降りしワルキューレ。反応速度の女神。男性ファン多数。女性ファンも多数……。そんな“英雄”にやっかんだ先輩が裏を画策して、彼女は月に戻されることになった。与えられた任務はなんと自分が卒業した訓練校の教官。そして初めての“教官任務”に緊張する彼女を月面で待っていたのは、訓練校始まって以来の落ちこぼれといわれる5人組だった……。
 いまいち押しの作家、秋山瑞人氏のデビュー作。新人とは思えないパワーで押し切られる文章は、常習性のある薬物のごとし。AIやロボットなど、無生物を書かせたら世界一。絵だけを見ると女の子が売りのありがちなモノに見えますが、その実体たるやかなりハード。「現実」を知るルノアが、何も知らない訓練生にどう接していくのか、その葛藤が見物。最後のアクションもなかなかの緊張感。とにかく魅せてくれる一冊。ただ、ミリタリー関係に拒否反応を起こす人にはちょっと厳しいかも。

【茅田砂胡】デルフィニア戦記1 放浪の戦士


「デルフィニア戦記1 放浪の戦士」
著者:茅田砂胡
イラスト:沖麻実也
中央公論社
bk1

 高校の頃からだから、実は始まった頃からなのか……、そのころから気にはなっていたモノの、表紙の絵柄から対象がワタシとは異なる事を感じ、手をつけずにいたのだけど、書評サイトでの評価数とそのべた褒めな様子から、思わず古本屋を巡って、一巻目を調達。とりあえず、読んでみて、モノの見事にはまってしまった。その後、続刊を仕入れるべく、古本屋を徘徊したが、発見できず、断腸の思いで新品を購入することに。新書版だから高いのにもかかわらず、全18巻。結局一週間で全巻購入、読破してしまいました。まったく、懐の寒いこと寒いこと。というわけで、以下感想。

 このシリーズのなによりの魅力は、主人公およびヒロイン(っちうのか?)、そしてそれを取り巻く人々のやりとりでしょう。ぽんぽんと繰り出されるそのせりふの群からは、どんなにつらい場面でも思わず笑いがこぼれ、そのキャラクターが妙に身近に感じられます。実際にいたら、迷惑千万な連中ですが、人間的な魅力は非常に大きいです。きっと、ふつうに考えればネタ的に大河ロマンとかいわれるような話なのですが、誰もがどたばたコメディーと評することでしょう。なかでも、物語の中心におかれる各独身男性陣の嫁取り物語は、抱腹絶倒ですね。笑いの連続。いろんな個性のキャラクターがでてくるから、きっと一人はお気に入りができるであろう、貴重な小説かもしれません。人気がでるのも頷けます。話としては、生まれに難ありな王様が、何とか王位についてそのあと近隣の二大国と一進一退の合戦をくりかえし……、みたいなシリアスな話なのに、全体を通してみてもそんな雰囲気はほんの少しで、基本的には皮肉の応酬、どつきあい、そんなかんじ。懐に余裕があったら、手に取ってみるとよいでしょう。お気に入りなキャラクター、一人あげるのは、ワタシには無理ですね。みんなお気に入りですよ。

【茅田砂胡】桐原家の人々4 特殊恋愛理論


「桐原家の人々4 特殊恋愛理論」
著者:茅田砂胡
イラスト:成瀬かおり
中央公論新社C NOVELS
bk1

 恋愛ものと言うよりも、ドタバタファミリードラマな感じの「桐原家~」最終巻。角川ルビーの時には出なかった曰く付き。ネタは、零君が桐原家にやってきた頃の一連の混乱劇。前回ちょっとしか出なかった城段君も今度はばっちり。「特殊恋愛理論」なんて副題がある割に、恋愛沙汰は味付け程度しか出てこない。そのかわり、少しスプラッタな描写が多いかも。読後の感想は「女は強し」の一言に集約されるでしょう。まあ、この人の作品はみんな女の人が強いんですけど。
 零君が掘り下げられたのは、期待通りにおもしろかったんですけど、不満点も2点ほど。まず何より挿絵がひどかったこと。発売日が延びたことを考えると、おそらく茅田氏の責任と思われますが。けっこう挿絵気に入ってるシリーズなので、ちょっとこれはいただけず。もう一つは、エピローグであるところの新婚生活が薄かったこと。ここで半分くらいはほしかったです。
 モノとしてはこれで終わりなんでしょうけど、すこーし不完全燃焼かな?

【川上 稔】機甲都市 伯林2 パンツァーポリス1939


「機甲都市 伯林2 パンツァーポリス1939」
著者:川上 稔
イラスト:さとやす
電撃文庫
bk1

 期待の川上さんの新刊。なんですけど、最近都市シリーズ読みにくいです。ワタシには。ただワタシが馬鹿なだけかもしれませんが、伏線の数が多すぎて頭で処理し切れません。第二期伯林上中下の中巻といった位置づけのようですけど、人は増えるは、伏線は増えるは、疲れる一方です。次も伯林らしいのでこれでやっとすべてに決着がつくといいんですけど。なんか、もうちょっと素直に気楽に楽しめる話がいいです。

2001年10月30日

【岩本隆雄】ミドリノツキ(下)


「ミドリノツキ(下)」
著者:岩本隆雄
イラスト:小菅久美
朝日ソノラマ
bk1

 「十年寝太郎」が初めてやったらしい連作の最終巻。
 今回の主役もまたしてもピュンくんか。こいつはいい味出してました。最後もしっかりさらっていったし。あと、挿絵氏の小菅氏のサイトにある「丸ピュン」は必見です!
 下巻としては、ちょっと走りすぎか、詰め込みすぎといったところか。主人公であるところの尚顕くんの周辺でおそらく4つ(3つかな?)の立場が入り乱れていて、序盤と終盤が少し混乱してしまった。もう少しゆっくりじっくり掘り下げて語ってほしかったかな? とはいうものの、安心して読める、昨今少なくなったまっとうなジュブナイルなので、是非星虫三連作と併せて読んでもらいたいかな。

【小川一水】追伸・こちら特別配達課


「追伸・こちら特別配達課」
著者:小川一水
イラスト:こいでたく
朝日ソノラマ
bk1

 性格なのか、何なのか、題材を妙にマニアックに選択する小川氏の自分的ファーストコンタクトだった「こちら郵政省特配課」の続編であり完結編。
 計らず今の首相さんの持論が郵政民営化であるという現状において、こーゆーものが出るというのもなんだけど、妙に濃いキャラクターとその情熱には魅せられるものがあるわけで。ただ、今回は脇役ががんばりすぎて、メインの二人が少し影薄目かなーという印象を受けたり。いや、実際には相変わらずトバしているのだけど、それがかすむくらいにもっと掘り下げてほしい人たちが今回多数出てくるし。何でカーバトルなのかという疑問はあれど、あのあたりの人たちは一度限りではもったいないくらいの人たち。別の話に出てくることを期待したい。
 何でも合理化をすればよいという今の風潮に対して、ドアツードアで顔の見える仕事でしか得られないものなんかを熱く語る、社会派なのかコメディなのか、ただ楽しませてくれるだけでなく、それなりに考えさせてくれるシリーズでした。

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