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【村山由佳】天使の卵


「天使の卵」
著者:村山由佳
イラスト:
集英社文庫
bk1

 村山由佳さんの「小説すばる」新人賞受賞作品だそうだ。中身はといえば、ばりばりの恋愛小説。でも、その辺にあるような、思わず赤面してしまうような内容でなく、出てくる人物は皆、何かしらの傷を負っていて、その傷故につらい恋を経験するような感じ。重いんですよ、話。でも、読んだ後は、何ともいえない気持ちにさせられてしまうんです。決して気分は悪くありません。のど(心)に突っかかった小骨がとれるような。そんなすっきりした気分になります。何でかよくわかんないんですけど。「天使の卵」は少なくともハッピーエンドではないし、またはっきりと結末が描かれているわけでもない。だけど、なんかこれで十分な感じする。共感しすぎるとちょっと痛いけど、十代、二十代の人間に支持されるのも当然と思えた。なにかしら感じるところがあるだろうから。「恋愛小説」って肩書きがついてしまうと、少し敬遠してしまうけど、ちらっと手に取ってみると少し心に余裕ができる……かもしれない。

2002年01月27日

【滝本竜彦】ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ


「ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ」
著者:滝本竜彦
イラスト:
角川書店
bk1

 第五回角川学園小説大賞特別賞受賞作。なぜかこれだけ大きめサイズの発行。
 ちょっとしたスリルを味わった夜の雪の帰り道で、退屈な高校生活を送っていた主人公君は、チェーンソー男と戦闘を繰り広げる美少女さんを目撃する。その場の勢いで関わりを持ってしまったが故に、退屈な生活にちょっとしたアクセントが加わるようになって……。
 と、まあ、日常と非日常の狭間を舞台にした青春モノとでも言いましょうか。なんだけど、ビミョーなんだよな、びみょー。普段、ワタシは本を読み始めるとほとんど読み終わるまでは一気に読んでしまうことが大半なのに、これは間に別の本が入り込み、読み終わるのに4日ほどかかった。これが示すにこの一冊は、浸れない。ワタシにとっては致命的。
 ネタとしては「深層心理の作り出した”イドの怪物”」扱いだろうと思うし、そのアタリはうまく処理していると思うけど、主人公とその文体がワタシにはいただけない。文中の高校生活に共感がもてると非常にハマる話になるのかも。うーん、いまひとつ。

2002年01月26日

【時雨沢恵一】キノの旅 -the Beautiful World-


「キノの旅 -the Beautiful World-」
著者:時雨沢恵一
イラスト:黒星紅白
電撃文庫
bk1

 キノとしゃべるバイクのエルメスが世界各地を旅する過程での出来事をまとめた短編形式のシリーズ。「シンフォニアグリーン」と全く同系統のものになる。ただこちらの印象は全体的にちょっと暗めかな。陰と陽、そんな感じ。色々な国が出てくるのだけど、どこか一つがぬきんでていて、それが原因でひどい国になってしまっている。そのなかで、キノが淡々と人に向けて銃を撃ったりすることで、微妙な緊張感があったり。局所的に読めばほのぼのしたところもあるのに、なぜか読後感は「重いモノ」を読んだ感じ。個人的にはシンフォニアグリーンのような明るい色合いの話が好きなので、こっちはどうも……。

【砦 葉月】シンフォニアグリーン


「シンフォニアグリーン」
著者:砦 葉月
イラスト:秋津たいら
電撃文庫
bk1

 植物の探索・採取・運搬などを生業とするプラントハンター・リィンが遭遇する出来事をまとめた短編形式の一冊。この人は電撃大賞・敗者復活組。
 秋津さんの挿絵のせいか、全体的な色合いが淡色という印象を受ける。全体の流れも淡々と進む。これは主人公であるところのリィンの性分によるところが大きいだろうけど。生態系がちょっと変わっていて、生活のかなりの部分に植物が密接に関わっている世界観は何ともおもしろいけど、そのユニークな植物たちをイメージできるかどうかで楽しみ方が変わる、かな? 癖がなく読みやすい、言い換えれば盛り上がりに欠ける、という感じか。清涼飲料水みたいな一冊です。

2002年01月22日

【咲田哲宏】竜が飛ばない日曜日


「竜が飛ばない日曜日」
著者:咲田哲宏
イラスト:DOW
角川スニーカー
bk1

 第四回角川学園小説大賞優秀賞受賞作品。
 方々での高評価がずっと頭の片隅にあって、先日書店に立ち寄った時にふと思い出して手に取ってみました。中身に関しては、ずーっと学校舞台のほのぼのストーリーとなぜか勝手に思いこんでいたせいで、全く逆のハードな出だしに非常にびっくりしましたよ。ちゃんと裏表紙読んでおくんだった。
 ギミックはちょっと多め。でもその多いギミックをちゃんと裁き切れているかな。小ネタ・小道具の使い方はよかったかも。最後の方の理由付けにはちょっと厳しい点もないことはないけど。中心二人の友人関係が強固に見えて微妙で、そこいらへんでまんまとミスディレクションされまくっているワタシ…。一つ気になるのは、最後落ち着いた時のカップリングか……。ひとり、背景が大きそうなのに触れられていないのがいるのが残念。この人の視点使って、短編でも作れそうかな。重い出だしの割には、「友情」に救われて気持ちのいい一冊になっているかも。

2002年01月12日

【甲田学人】Missing3 首くくりの物語


「Missing3 首くくりの物語」
著者:甲田学人
イラスト:翠川しん
電撃文庫
bk1

 これまた結構短いスパンでの新刊。なんだけど、今回前後編の前編。怖がらせるだけ怖がらせておいて、次に持ち越しです。
 文章がかなり読みやすくなってきている感じ。だけど、話半分のせいか、少し今回内容薄いかな。決着が付く次でどこまで盛り上げるのか、エサはもうだいたい撒かれているみたいなので、それをどうまとめていくのか、楽しみに待ちましょう。

【佐藤ケイ】天国に涙はいらない5 逝き女五枚羽子板


「天国に涙はいらない5 逝き女五枚羽子板」
著者:佐藤ケイ
イラスト:さがのあおい
電撃文庫
bk1

 相も変わらずのハイペース刊行。なんだけど、今ひとつ盛り上がりに欠けるんだよなー。マンネリ化してきたというか。大きな一本道が背景に見えないせいで、一話完結短編集を読んでいるような感じ。しかも、いい加減萌えネタがうっとおしいかも。斬新な切り口のネタをいつまでも引きずっているのは、やはり危険と言うことなんだろうか。次、どうするかなー。

【茅田砂胡】レディー・ガンナーの大追跡(上)


「レディー・ガンナーの大追跡(上)」
著者:茅田砂胡
イラスト:草河遊也
角川スニーカー
bk1

 続刊が望まれて登場の「レディ・ガンナー」シリーズ二巻目。どうやら長い話らしく今回には(上)の文字が。そのせいだかなんだか、前半半分くらいは、この世界における社会通念の説明に費やされただけで、非常に退屈だったり。このシリーズ、9割方はキャサリンお嬢様のパワーでもっているので、崩壊寸前というか、本人が出てきた時にはどんなにほっとしたことか。
 今回はお供に「蛇」のヘンリー氏を連れての冒険旅行のようです。次(下なのか中なのかはわかりませんが)から本格的に動き始めるキャサリンお嬢様。そのパワーを楽しみにしましょう。

【三枝零一】ウィザーズブレイン2 楽園の子供たち


「ウィザーズブレイン2 楽園の子供たち」
著者:三枝零一
イラスト:純 圭一
電撃文庫
bk1

 第7回ゲーム小説大賞銀賞受賞作の2作目。同期の中では一番遅かった続刊だったりする。
 情報を「魔法」として使うというちょっと変わった世界観の未来世界のお話。今回のネタもモルモット系かな? 「魔法」がらみの設定を忘れてしまっているせいでちょっと最初にとまどったけど、乗り始めてしまえばそんなに気にならないかな。ただ気になったのは、出てくるキャラクターたちかな。名前、性格、趣味などなど、所々にとあるコミックを彷彿とさせる部分が多い。前作にも一部そういう記述が見られたけど、こっちはそんなに気にならなかったんだけど、今回はちょっと露骨すぎて、ね。意図してやっているのか、はたまたたまたまなのか。あとがきを読む限り、ちょっとした意図もあるのかもしれないけど、たぶんそんなのに頼らなくてもおもしろく書けそうな感じなだけに、もったいない。
 泣き所もしっかりあるし、終わり方も綺麗だから、今後も期待はもてるかな。ただ、ともするとヒロインの背景がいつも同じパターンになる危険性も高いかも。

【中村恵里加】ダブルブリッド7


「ダブルブリッド7」
著者:中村恵里加
イラスト:たけひと
電撃文庫
bk1

 もう7冊目まで来てしまいましたか。相変わらずのスプラッタぶりであり、安心して読めるシリーズです。今回の主役はくまさん。言葉少ない分、行動が所々ほほえましかったかな。そろそろ物語が収束に向かいかけている雰囲気だけど、最近触れられていない、かなり大きいであろう伏線が処理されていないので、実はまだまだ続くのかも。結構、コンスタントに新刊が出てくるので、多少長引いても問題ないかな。体壊さない程度にがんばっていただきたいものです。

【橋本 紡】リバーズ・エンド


「リバーズ・エンド」
著者:橋本 紡
イラスト:高野春彦
電撃文庫
bk1

 ある日突然届いた携帯メール。「あなたの街に海はありますか?」 これをきっかけにメールのやりとりを始める中学2年生の主人公。交流が活発になった頃、メール交換相手は偶然にも主人公の学校に転校してきて……。
 ある意味これまた王道なボーイミーツガールものですな。そのへんでは「最終兵器彼女」臭がするというのですが、ワタシはこのマンガを読んでいないので何とも言えないです。前半と後半の雰囲気ががらっと変わります。というか、変わり方があんまりな気がします。主人公とヒロイン以外の扱いがあまりにぞんざいと言う感じ。かなり壮大な背景をにおわせていますが、あまりに言葉少なでまだまだ状況把握もできず、これもやっぱりぞんざいかな。続き物ということですが、次の巻次第で評価が分かれるところかも。

【秋山 完】吹け、南の風1-星戦の熾天使


「吹け、南の風1-星戦の熾天使」
著者:秋山 完
イラスト:小菅久美
朝日ソノラマ
bk1

 待望の「南の風」であります。「ペリペティア」ででてきたフレンが主役と聞いていたのですが、お話が長くなって分冊されるにいたって、一巻目の主役は謎の美少女・ジルーネお嬢様のようで。
 これから始まる「無邪気な戦争」のまさにプロローグ。だからまあ、全体的に盛り上がりには欠けるものの、今まで出てきた人たちがちょこちょこと再登場しているので、そういう点ではたのしめるかな。今回のジルーネお嬢様はかわいさ爆発かもしれません。いままで妖艶さや不気味さなんかが多く醸し出されていたので、ちょっとイメージチェンジ(笑) アキカン世界における、大きな歴史事件であるところの「無邪気な戦争」がこれからどのように展開していくのか、楽しみです。発刊ペースは気になりますが……。

2001年12月09日

【志村一矢】月と貴女に花束を5 聖夜狂瀾


「月と貴女に花束を5 聖夜狂瀾」
著者:志村一矢
イラスト:椎名 優
電撃文庫
bk1

 某所で様々に話題になっている問題作(?)の5巻目(笑) 実に一年ぶりの新刊。当初の予定ではこれが最終巻のはずが一冊のびて全6巻に変更になったとか。今回の主役は中心のカップルではなく、兄様がらみでした。
 このシリーズ、出てくる男性陣がみな同じ境遇という、ある意味わかりやすい状況において繰り広げられる往年の少年マンガのような強さのインフレの激しい作品になっています。昔の少年マンガのノリで読むと十分に楽しめるでしょう。斜めから見てしまったら、終わりです。
 今回は、全編通してずっと戦闘続きなので息つく暇もないはずですが、ちょうど中間地点で天然なヒロイン様が一発はずしてくれていますので、そこで一息つけるでしょう。とにもかくにも無難なシリーズです。次の最終巻でどういうオチに持っていくのか、見物でしょう。

2001年12月01日

【茅田砂胡】スカーレット・ウィザード外伝 天使の降りた夜


「スカーレット・ウィザード外伝 天使の降りた夜」
著者:茅田砂胡
イラスト:忍 青龍
Cノベルスファンタジア
bk1

 怪獣大決戦(笑)その後。
 あとがきにあるように、「エピローグ&プロローグ」です。話のもっていきかたには賛否両論かなりあるようです。ワタシは個人的にこういう展開は好きなのでいいですが。デル戦の最後3冊がダメな人には、これもダメなようですね。外伝だからいいでしょう、と思うのですが。「本編の後日談が読みたい!」という人なら素直に楽しめると思います。

【一色銀河】若草野球部狂想曲2 クイーン・オブ・クイーンズ


「若草野球部狂想曲2 クイーン・オブ・クイーンズ」
著者:一色銀河
イラスト:美鈴 秋
電撃文庫
bk1

 今回のネタは「幼なじみ」と「ID野球」。細かい話が続くと言えばそうかもしれない。幼なじみがでてくると、たいてい荒れる恋愛沙汰に関しては、あまり盛り上がりを見せないのが残念。あくまでもメインは野球と言うことかな。前回の野球論にさらに磨きをかけた感じ。理論でできる魔球を使っている分、その理論解説が少し冗長になっているのが難点。兎に角今回は「野球小説」でした。

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