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2002年05月04日

【乙一】暗いところで待ち合わせ


「暗いところで待ち合わせ」
著者:乙一
イラスト:
幻冬社文庫
bk1

 視力をなくし、一人で暮らす女性の家に、こっそり隠れる殺人事件の犯人として追われる男。互いに世間とうまく渡り合えない者同士の、奇妙な同棲生活。
 ホラー風味の「黒・乙一」と切なさ炸裂(笑)「白・乙一」 これはワタシの好きな「白」風味。あいもかわらず、何ともいえない薄く、しっとりとした色合いの話を書く人ですね。派手さはないけど、読後感がいいので何度も読み返してしまう。ミステリー要素も多少はあるけど、そんなことは関係なく、中心二人のおっかなびっくりな振る舞いがほほえましくもあり、また自分も省みる部分はあるかな、と。
 「幸せは子猫のかたち」とともに、好きな作品の一つになりました。

【秋山 完】吹け、南の風2 星界の襲撃者


「吹け、南の風2 星界の襲撃者」
著者:秋山 完
イラスト:小菅久美
朝日ソノラマ文庫
bk1

 日曜作家・秋山完氏にしては間をあけない新刊刊行(笑) そして今回もフレンは出てこない罠。そのかわりにちょっとやさぐれ気味なキャラクター登場。一冊ごとに中心におく人物が変わり、最終的に怒濤の勢いで展開が進んでいくと思われるので、後2冊くらいは新キャラ紹介のようになるのかも。ちょろちょろとキーワードも散在し、巻末補遺に航宙船の説明ががっつり載っていたりと結構あとで読み直す必要ありかも。

2002年04月11日

【うえお久光】悪魔のミカタ2 インヴィジブルエア


「悪魔のミカタ2 インヴィジブルエア」
著者:うえお久光
イラスト:藤田 香
電撃文庫
bk1

 前回のゲーム小説大賞銀賞受賞作の早速の続刊。
 前作、結構良くできていて、期待もしていたのですが、今回は自分的にちょっと……。一言で言えば「やりすぎ」という感想でしょうか。
 まず、文中に傍点が多すぎです。ミステリーを強調していて、それを醸し出したかったのかもしれませんが、折角テンポのいい文章がかえって読みにくくなっていて逆効果。第一、傍点だって、多用したら意味ないです。
 つぎに、個性的すぎるキャラたち。とくに主役およびその周辺の女子の扱い。同様な雰囲気で、やはり少し食傷気味な「天国に涙はいらない」は、まだギャグにしているので許容範囲内ですが、ココまでやってしまうとさすがに中高生向けと言うのはまずいかと。
 他の部分はうまいと思うのです。熱意のベクトルが変な方向かな。
 コレを読んで、やはり最近の電撃文庫の方向性には少し疑問を持たざるを得ないかな……。よりにもよって微妙な時期に……。

2002年04月08日

【茅田砂胡】暁の天使たち


「暁の天使たち」
著者:茅田砂胡
イラスト:高梨かりた
中央公論新社Cノベルスファンタジア
bk1

 茅田さんの新シリーズ。ってことになっているけど、デル戦、紅魔女を既読していないとハッキリ言って全然わからない出来。そこここで作者願望丸出しの同人誌のような作品と評されているが、その通りか。
 今までは、王様&愉快な側近たち(デル戦)や女王&キングその他(紅魔女)の様な懐の深い人たちが周りにいてくれたおかげで、中心の金&黒のえぐいところがうまく中和されていた。しかし、今回、その役どころにあるキャラが不在なため、エグさ炸裂。このあたり、次巻以降改善されることを願うが、いまの配置から言って厳しいかもな。
 某所では、第二の温帯(栗本薫)化説も浮上。危険な香りが漂う興味深い新シリーズのようです。

【鷹見一幸】新・時空のクロス・ロード 緑の指の女の子


「新・時空のクロス・ロード 緑の指の女の子」
著者:鷹見一幸
イラスト:あんみつ草
電撃文庫
bk1

 結構お気に入りだったシリーズの新作。設定の変わった、しかし基本は似ているモノ。なんだけど、今回はすこし微妙。
 パラレルワールド系のお話で、今までは本人がそこに入り込むことで、その世界の方向を変えてしまうという話だったのだけど、今回は、そのあたりの影響があまり明確でなく、滅亡に瀕しているというその世界観の描写が今ひとつ不足気味。主人公周りのエピソード(前置き)が幾分冗長だったせいかも。全体的に少しテンポが悪かった感じ。
 これも前回同様3作一連のようなので、次に期待したいところ。

【伊都工平】第61魔法分隊2


「第61魔法分隊2」
著者:伊都工平
イラスト:水上カオリ
電撃文庫
bk1

 新人さん(といっても2代前か)の続編新刊。なんだけど、前回の人たちは一人しか出てなくて、いきなりの外伝だそうです。
 前作から少し間が空いてしまったので、すこし世界観や各名称をわすれていてわかりにくかったですが、かなりテンポが良くなっていて、読みやすくなっています。今回中心のキャラクターたちもよく動いていて、個性的。ただ、黒幕近辺の人物相関や思惑が少し混乱気味かな。惜しむらくは、後半に妙に誤植が目立ったこと。せっかくのテンポが台無しでした。もう少し校正しっかりしてください。ともあれ、続刊以降かなり期待がもてそうな雰囲気です。
 未だによくわからないのは、魔法杖の構成。本文挿絵にまともに描かれているモノがないので、一回どっかで図説してもらいたいモンです。

2002年03月10日

【志村一矢】月と貴女に花束を6 聖夜終焉


「月と貴女に花束を6 聖夜終焉」
著者:志村一矢
イラスト:椎名 優
電撃文庫
bk1

 電撃レーベルでは大人気なシリーズの最終巻。某所ではベタだ、地雷だと歪んだ愛し方をされている作品ですが、その勢い衰えず。全体のイメージとしては、「ジャンプに代表される少年マンガ」的進行です。強さのインフレ、激しい激しい。死人が蘇るという反則が何度となく出てきてしまうのは、多少興ざめでしょうか。
 前半は、前巻につづいてのラスボス戦、第2ステージ。映像にするとかなり派手で迫力のある場面が続くんですが、いかんせん描写力不足は否めず、脳内補完に頼る部分が多いのは残念。最後の方は主人公とともに作者の方も力つきた感が……。エピローグに関しては、落ち着くところに落ち着いたかな、と。そうするしかないような終わり方でした。最初の頃の甘あまな雰囲気が、最後に近づくにつれて薄れてしまったのは、しょうがないのでしょう。
 いろんな意味で、ストレートなシリーズでした。

【野村美月】赤城山卓球場に歌声は響く


「赤城山卓球場に歌声は響く」
著者:野村美月
イラスト:依澄れい
ファミ通文庫
bk1

 ファミ通文庫エンタメ大賞・第3回最優秀賞受賞作。「ドナドナ」と「卓球」と「世界征服」と「巫女」のお話。そもそも題名からしてよくわからない。読んでみても、最初の方はただの学園コメディーにしか見えない。しかし、中盤以降、物語は驚天動地の展開を見せる。
 正直、「なぜ?」という感想しか抱けない、そのエッセンスの数々。確信犯なのか、ただの天然なのか、理解に苦しむその展開はしかし、なぜか綺麗にまとまっていて、オチもしっかり。ただただ脊髄反射のみで楽しむ一冊か。いや、おもしろかったです。

2002年02月22日

【うえお久光】悪魔のミカタ 魔法のカメラ


「悪魔のミカタ 魔法のカメラ」
著者:うえお久光
イラスト:藤田 香
電撃文庫
bk1

 同じく第八回電撃ゲーム小説大賞・銀賞受賞作。
 ミステリーにしようと思って、途中で方針転換して、オカルトコメディーとも何ともつかなくなってしまった微妙な話。中心の「みーくる」の皆様たちのアウトローぶりは結構大好きだけど、ちょっと裁き切れていないのが残念。人の配置が多すぎたかな? 特に双子と部長。これもやっぱり部分部分に言葉不足や裁ききれない伏線なんかが残っているのが気になる。ドラえもんの道具系のネタを今後うまく使えるかどうかが、もう出版の決まっている続刊の行方を左右するか。挿絵の雰囲気は好き。今後に期待、かな。

【有沢まみず】インフィニティ・ゼロ 冬~White snow


「インフィニティ・ゼロ 冬~White snow」
著者:有沢まみず
イラスト:にのみやはじめ
電撃文庫
bk1

 第八回電撃ゲーム小説大賞・銀賞受賞作。
 話の大筋で、俗に言う「鍵系」を彷彿とさせるけど、うまくまとまってると思う。ただ、ヒロインの電波ぶりがかなり激しすぎるのは、読む人を選ぶ要素となってしまうかも。所々言葉不足、説明不足の所があってよくわからないまますぎてしまう部分があるか。エピローグは綺麗なんだけど、そこに至る空白部分がちょっといい加減すぎる気もする。アラが目立つけど、これから何とかなってくれそうな気もする。あと、挿絵がいくら何でもダメダメすぎ。もうちっとまともな絵師をつけてあげてください。編集サイドさん。最近電撃はこういう挿絵で損をするパターンが多すぎる……。

2002年02月17日

【茅田砂胡】レディガンナーの大追跡(下)


「レディガンナーの大追跡(下)」
著者:茅田砂胡
イラスト:草河遊也
角川スニーカー
bk1

 というわけで、キャサリン嬢大暴れ……でもなかった下巻。
 それなりに暴れてくれたし、いつもの四人組もそれなりに活躍したんだけど、どうも脇役で主張の激しい連中が大挙してやってきたせいで、中心がかすんじゃったかな? ニーナはいい味出してましたけど。舞台背景はかなり複雑だけど、中心が中心だけに、今後展開を広げるのが難しいかも。人種問題の扱いももちっと薄目にすると冒険活劇で楽しくなるのかな。いまひとつ乗り切れなかったのはちょっと残念。

【渡瀬草一郎】陰陽ノ京 巻の二


「陰陽ノ京 巻の二」
著者:渡瀬草一郎
イラスト:酒乃 渉
電撃文庫
bk1

 待望の続刊。今回は挿絵と相まって、一巻目よりもぐっと雰囲気が良くなっています。キャラクターたちもしっかりしてきた感じ。今回は脇の時継、吉平、貴年がものすごくいいところを持っていきます。吉平はたまに発言がコワいですけどね。清明、道満のオヤジーズも捨てがたいところではあります。「パラサイトムーン」の色鮮やかな方もいいんですが、こういう静かな物の方が、いい感じです。続刊も決まっているようなので楽しみですね。

【円山夢久】リビスの翼


「リビスの翼」
著者:円山夢久
イラスト:絵楽ナオキ
電撃文庫
bk1

 リングテイルからずいぶんあいての新刊。相変わらずしっかりした物語です。読後感もすっきりしてるし、綺麗だし。読んだ後、思い浮かんだのが、なぜか「グランディア」。翼で連想しただけかな。ページ数の割に読むのに時間がかかったのはそれだけ密度が濃いと言うことなんでしょう。最近色物ばかり読んでいたので、たまのこういう純粋なファンタジーを読むとホッとするかも。これからもこういう綺麗な物を読ませてもらいたいです。イラストも宮崎駿風味でいい感じです。

2002年01月30日

【村山由佳】すべての雲は銀の…


「すべての雲は銀の…」
著者:村山由佳
イラスト:
講談社
bk1

 「あーもー、なんでこうこの人はこういうのを書くかなー!」というのが読後最初の感想。
 恋愛小説と分けられるモノでもないと思われる、村山女史のハードカバー。この人の世界は心に痛いのだけど奥底まで浸みる、そんな感じを受ける。……うーん、うまく表せないのがもどかしい。とにかく、「おいしいコーヒー」シリーズみたいにほんわかほんわかしているのもいいけど、やっぱりこういうのだよなぁ、と思う。よくわからないですね。ちょっとでも気になったら、とにかく一冊なんか読んでみてください。「天使の卵」とか「青のフェルマータ」とか文庫であるし。
 作中の雰囲気、というか農場。どう考えても村山女史の鴨川農園を彷彿とさせて、ここでは笑みがこぼれたり。そのあたりは海風通信の続報を楽しみに待ちましょう。

【村山由佳】おいしいコーヒーの入れ方5 緑の午後


「おいしいコーヒーの入れ方5 緑の午後」
著者:村山由佳
イラスト:志田正重
集英社ジャンプJブックス
bk1

 「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズ(村山由佳)待望の新刊です。こっぱずかしくなりながらもついつい読んでしまう、少女漫画のような恋愛小説(笑) 表紙裏なんかのあらすじを読むと、すさまじい大波乱を予測させるような感じだったのですが、本編はそこまで激しくもなく、二人は二人のままなわけで。少しずつ少しずつ二人を取り巻く環境が変わりつつあって、次巻以降が期待大です。ただ、文句があるとすれば憎き中沢氏や、我らが尊敬するマスターなどがちっとも出てこなかったことでしょうか(笑) 今回は丈君のお話もありましたが、ぶっちゃけてしまえば本編よりこっちの短編の方がおもしろかったかな。これからは、どうもweb連載という形を取るようなので、これもまた期待大ですね。

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