« paraglider | メイン | space »

 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12  | 全部読む

2003年02月09日

【渡瀬草一郎】パラサイト・ムーンVI 迷宮の迷子達



パラサイトムーン〈6〉迷宮の迷子達表紙
[amazon]


「パラサイト・ムーンVI 迷宮の迷子達」
著者:渡瀬草一郎 → 草一屋
イラスト:はぎやまさかげ → Fountain's Square
電撃文庫
 

 これで第二期シリーズも完結。まさにオールキャストです。都市シリーズに迫るほどの厚さでしたが、その分読み応えもばっちり。実験室の子供達、最後を飾ったネイは期待を裏切らず、いい味を出しておりました。最後は落ち着くところに綺麗に落ち着いて、よかったです。ほのぼの後日談なんかをもうちょっと見てみたいところではありますが。
 カーマイン卿のお話もなかなか……。残念ながら、パラサイト・ムーンはこれで一時中断と言うことですが、せっかく第二部に入って勢いがついてきたので、早い段階での新刊を期待します。

【壁井ユカコ】キーリ 死者たちは荒野に眠る



キーリ―死者たちは荒野に眠る表紙
[amazon]


「キーリ 死者たちは荒野に眠る」
著者:壁井ユカコ パルプチャンネル
イラスト:田上俊介
電撃文庫
 

 第九回電撃ゲーム小説大賞・大賞受賞作。

 霊感少女と死ねない兵士としゃべるラジオのロードムービー調な連作短編ですか、ね。著者本人があとがきで言ってるように、荒野の惑星、スチームパンク、旧式ラジオ、錆びた機械と古いオイルなんてな雰囲気です。赤茶やグレーといった全体の暗めな色合いの中で、ちょこっと見られる温かい夕焼けの朱がちょっと印象的なお話。世界背景がなかなか深そうなのが気になります。このあともこの妙なトリオの旅は続くんでしょうか? 続いてくれるのを楽しみにしてます……。

2003年02月02日

【乙一】死にぞこないの青



死にぞこないの青表紙
[amazon]


「死にぞこないの青」
著者:乙一 Web Otsuichi
幻冬舎文庫
 

 白より黒乙一のちょっとホラー? 年齢が近いせいもあって、小学生の時分を思い出してみたり。よくある話、だけど乙一風味がつくとこんな感じですか。前半、中盤、そして後半と、それぞれの雰囲気が違っていて読みやすいです。ホラー要素が全面というわけでもなく、ちょっとしたダークな小学生の日常、かな……。最後の落ちが綺麗なのはさすがです。

【三浦真奈美】邂逅のハレス海 アグラファ4



邂逅のハレス海―アグラファ〈4〉表紙
[amazon]


「邂逅のハレス海 アグラファ4」
三浦真奈美/那知上陽子 → NAC画廊
中央公論新社Cノベルスファンタジア
 

 レッサーパンダvsツキノワグマ、ついに激突! ってな感じのアグラファ最新刊。今回は海戦でした。相も変わらず、色気というものが欠片もないですが、そんなことも気にならず、レッサーパンダ・ミオくんがだんだん逞しくなっていく様は、親が子を見る心境でしょうか(違 唯一と言っていいかもしれない色気担当予備軍のマウンテンゴリラ嬢が出てこなかったおかげで、全編通して戦いがあっても平和な感じ。彼女が出てくるとなんだか雰囲気が怪しくなってイヤなのです。

 互いの認識も終わって、これから一気に戦争ムード。その裏で何が動くのか、徐々に話も盛り上がってきたかなぁ、と言う感じ。

【貴子潤一郎】十二月のベロニカ



12月のベロニカ表紙
[amazon]


「十二月のベロニカ」
著者:貴子潤一郎
イラスト:ともぞ MANAT
富士見ファンタジア文庫
 

 第十四回富士見ファンタジア長編小説大賞・大賞受賞作。

 典型的なファンタジーです。 

 ――国にとって重要な立場に立たされてしまった幼なじみと幼い頃に交わした約束を守るため、究極の選択を迫られた結果、その先に続く道は、悲劇か、はたまた……。

 「ものの見事にヤラれた!」というのが、中盤まで読んだときの感想。違和感なく読んでいたのに、そう来ましたか。うれしい驚きでした。中心におかれたキャラクタたちや、その背景、伏線も綺麗にまとまって、さすが大賞な作品。最近ねらいすぎのものが多いライトノベル業界において、こんな懐かしさを感じるものを読むと、心が洗われます。

 世界に広がりが見られるので、この先もちょっと楽しみかなぁ。

【西尾維新】クビキリサイクル 青色サヴァンと戯れ言遣い



クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い表紙
[amazon]


「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯れ言遣い」
著者:西尾維新
イラスト:take → take+
講談社ノベルス
 

 2ちゃんねる・ライトノベル板での2002年下半期人気投票における評価を見て、とりあえず読んでみた。

 癖があるとは言われていたけれども、ここまでとは……。正直、ワタシには合いませんでした。確かに、結構皆さんいいキャラクタをしているのですけれども、これで中身が殺人ミステリというのがワタシには厳しいかなぁ。森博嗣なんかは結構読めたのに、これは最後の謎解きがすごく読みにくかった。ふつうライトノベルのように、ちょっとアウトロー気味などたばたコメディとかだったら気に入ったかもしれないけど、ミステリだったのが……。うぬ、残念。

2002年12月20日

【小川一水】強救戦艦メデューシン 上


「強救戦艦メデューシン 上」
著者:小川一水
イラスト:こいでたく
朝日ソノラマ文庫
bk1

 小川印の職業シリーズ。今回の職業は「白衣の天使・看護婦」さんです。防弾フードかぶって、装甲車でかけずり回る、偉くぱわふりゃーな看護婦さん達ですが。
 長期の及んでいる戦争の、国内における反戦の目線を惑わすために設立された衛生大隊。戦場の最前線まで強行し、負傷者の救助・治療にあたるという無茶な部隊の話。別に業界人ではないので、詳しい点には間違いもあるかもしれませんが、なんにしても前線で働くプロの姿の格好良さがあふれていることは確かだし、戦争におけるいわば裏方の仕事を、こんな取り上げ方したライトノベルも珍しいので、非常におもしろく読めちゃいました。
 なんとなく、世界のごく一部の動きが、戦争したくてうずうずしているように見える昨今、こんな事態が現実にはなってほしくないな、とも思いますが……。

【倉田英之】R.O.D 第7巻


「R.O.D 第7巻」
著者:倉田英之
イラスト:羽音たらく
集英社スーパーダッシュ文庫
bk1

 R.O.D待望の新刊。このところのシリアスアクション続きの息抜きということで、ねねね&読子のトラブルコンビの短編+1。基本に立ち返り、本読みの哀愁を誘う、自虐的な笑いを伴う短編でした。
 最初のプロローグ、今、巷で話題の某ファンタジーベストセラーに関する下りは思わず爆笑してしまった。いや、確かにそうだから。読子ほどの愛書狂ではないものの、それなりの活字中毒症を患っている(笑)人間にしてみれば、「そうそう」と頷いてしまうエピソードがちらほらと。やっぱりこういうタイプの違う「内輪受け」がコレの魅力かと。

【椎野美由貴】バイトでウィザード 流れよ光、と魔女は言った


「バイトでウィザード 流れよ光、と魔女は言った」
著者:椎野美由貴
イラスト:たけひと
角川スニーカー文庫
bk1

 今年の角川スニーカー文庫学園小説大賞・大賞受賞作。大地に埋められた昔の神様のかけらの力を使って、世の中の澱みをなくしていく「矯正術者」という職に就いた双子の兄妹が繰り広げるどたばた話。
 「矯正術者」という職業に関してはおもしろいと思う。影響範囲がご近所一帯というのも微妙なちんまり感があっておもしろい。中心の双子、かたっぽはとことんハイテンションな女の子。もう一方がとことんクールな男の子。キャラクター同士の掛け合いも軽めでテンポよく進むので読みやすい。んだけど、今ひとつ根幹のエピソードに関しての掘り下げ方が弱いかも。最後がすごく駆け足で薄っぺらく感じられてしまうのは残念。双子♂の方の背景ももうちょっとうまく使えると思うんだけど。
 突出した部分はないけれども、無難に読める一冊かなぁ。続刊刊行がすでに決まっているようなので、今後この「矯正術者」というものをどう扱っていくのか、それ次第かな。

【岩井恭平】消閑の挑戦者 パーフェクト・キング


「消閑の挑戦者 パーフェクト・キング」
著者:岩井恭平
イラスト:四季童子
角川スニーカー文庫
bk1

 今年の角川スニーカー文庫学園小説大賞・金賞受賞作。世界から天才と称えられる少年プログラマーが、日本の一つの都市を舞台に一つのゲームを主催した。その参加者はみなそれぞれの世界での天才達。奇妙なバトルロイヤルを主催する天才プログラマーの真の目的とわ? ってなかんじの話。
 登場人物がみんな天才で、なぜかみんな格闘センス抜群。そして人殺しオーケーのゲーム。主役は大阪弁の天然少女。ゲームのシステムや、謎かけなんかはよくできているし、おもしろいと思うんだけど、天才が安っぽくなってしまっているのと、この話の一番の土台となっているだろう「能力」が非常に唐突に現れる感じ、それからなんと言っても、周りの速度とあまりに乖離した主役の少女の天然等々のアンバランスさが何とも……。最後の落ちもよくわからないままだったし。う~ん、荒削りだなぁ。

【茅田砂胡】海賊王の帰還 暁の天使達3


「海賊王の帰還 暁の天使達3」
著者:茅田砂胡
イラスト:鈴木理華
中公新社Cノベルスファンタジア
bk1

 「看板に偽りあり」というのは言い過ぎか……。いずれにしても、題名から期待される人物が出るまで時間のかかることかかること。全体的にこのシリーズ、いままのでデルフィニア戦記および、スカーレットウィザードでちらりとにおわされてきた金・黒がらみのエピソードを、すべて克明に書き出すことだけを目的をしているように感じられますな。
 中心に据えられた話が未だ見えずの状態なので、どうも話に一貫性が見えない。お気に入りのキャラクタが出てくることを純粋に楽しむのが基本になるか。とはいえ、キングと女王がらみの周辺人物同窓会なんかはほほえましいのだけれども、今回、すこし金の言い分が……。今までの作品が楽しめたのは、ひとえに変な王様や変な海賊や変な女王がいたおかげであることを痛感した訳です。最後の最後に、次への期待がもてそうな展開になったので、次次第かなぁ……。

2002年12月10日

【長谷敏司】フリーダの世界 天になき星々の群れ


「フリーダの世界 天になき星々の群れ」
著者:長谷敏司
イラスト:CHOCO
角川スニーカー文庫
bk1

 前作「楽園」で独特の色合いの世界を描き出した長谷氏の待望の新作。今回の主役は《銀髪のコンピュータ》セルm……、いや華麗なる暗殺者・フリーダ嬢。
  内戦が絶えない故郷のゲリラの資金源として組織に身を置き、暗殺を請け負う少女・フリーダ。一流の暗殺者として仕事をこなしていた彼女が、新たな任務を受け身を置くことになったのはとある女子校。そして、下宿先のルームメイト・アリスに出会うことで彼女の中の何かが変わっていく……。
 今作も、舞台は未来世界なので仕掛けはSFですが、どちらかというと人間の内面にスポットを当てた人間ドラマかと。神様視点ですが、対象を3人に分けて、ザッピング形式で話を展開していくのが、慣れるまで少し読みにくいかもしれません。慣れてくると人の心理の動きなんかがよく出ていて読み応えがあります。人の描写もそうですが、何より文章から想起される映像が鮮やかなのが、この人の特徴じゃないかと思われます。
 どうやらコレはシリーズもののようですので、真っ白なアリスと生活を共にする、未だ自分の色を知らないフリーダがどのように色を付けていくのか、非常に興味深いところです。遅筆の気があるので、次はがんばって早めの刊行を熱望します。

2002年12月04日

【三浦真奈美】蒼穹のシディ


「蒼穹のシディ」
著者:三浦真奈美
イラスト:那智上陽子
中公新書Cノベルスファンタジア
bk1

 何となくずっと気になってはいた三浦真奈美氏の本に手を出してみた。新刊が出たばかりだったので平積みされていて目につくから。で、その新刊が出たばかりのシリーズを最初から読んでみたわけです。
 舞台設定としては、古代エジプト・ギリシャあたりのイメージかな。デルフィニア戦記なんかに似ている感じ。
 視点は二つ。もと身分ある家の次男であった海賊の親分と、強国の役人のおぼっちゃま。この二人の物語が交互に展開されていくのが基本。その間でなぞめいた男がうろうろと。一巻目なので主要人物の顔出しのような雰囲気が色濃いけど、おぼっちゃまの方の「レッサーパンダ」ことミオくんの成長物語は今後ワタシ好みに展開されていきそうな感じ。逆に海賊「ツキノワグマ」ことアインの方はちょっと……、かな。ま、好みの問題です。舞台設定は好きな方なので期待をしたい感じ。

【水野 良】ロードス島伝説5 至高神の聖女


「ロードス島伝説5 至高神の聖女」
著者:水野 良
イラスト:山田章博
角川スニーカー文庫
bk1

 正直、買ってページを開くまで、スパークくんの話の方(新・ロードス島戦記)だと思ってました。あとがき見たら、四年半ぶりとか言ってますから無理もないかと。当然、前巻がどう終わったかなど覚えているはずもなく。
 今回の主役は聖女なのか一人の女性なのか、微妙な感じのフラウス。この人のおかげで、普段色気に乏しいロードスの話が、珍しく華やかだったのは確かですが、全体として、ロードス島戦記の補足でしかないという感じは否めないところ。息も絶え絶えの中での完結という雰囲気がひしひしと。とりあえず、未完のまま放っておかれなかっただけよかったと言ったところでしょうか。

【伊都公平】第61魔法分隊3


「第61魔法分隊3」
著者:伊都公平
イラスト:水上カオリ
電撃文庫
bk1

 今回の主役は、シュナさん。どうやら巻ごとに主役を変えていく構成らしい。前巻の話の裏でなにが起きていたのかということが今回のメイン。
 なんですが、相変わらず読みにくいシリーズです。勢力が最低でも4つ? もっと多いかも。当然その分登場人物も多いのですが、それらのキャラが立っていないのが厳しい。主人公周りの人間達ですら、会話での区別が付かないと言うのが浸って読めない大きな原因。
 「凍土緑化計画」という大きな柱はしっかりしていて、その周りの出来事を進めていくという形は明確だから、キャラクターの立ち具合が何とかなるとおもしろくなると思うんだけどなぁ。次回以降、改善されることを期待します。

全部読む |  1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12