それにしても、最近文庫の値段が上がってつらい。平気で一冊600円を突破するようになったし、その割に背を見ると薄かったりするし。ずーっと「活字離れ」を叫んでる割に、敷居が高くなるのはどういうことなんだか。今でこそ、バイトをすることでそれなりの収入が入るから、こうして結構な量の文庫を手にすることができるけど、高校時代の小遣いでやりくりしようと思ったら、月に5冊も買えればいいほうなんじゃないかと思う。文庫のくせに700円、800円を突破するものもあるというのは、ちょっと納得行かないものもある。とくに最近の電撃文庫と角川スニーカーなんかは結構その傾向が強いのだけど。これなら新書で出してもらった方がなんぼか納得も行くというもので。文庫本ていうものは、500円の壁を越えないものという認識だったんですけど、ひょっとしてこれってもう時代遅れ?
◇【小野不由美】「十二国記シリーズ」講談社文庫[book]
まぁ、有名なシリーズなので、知ってる人も多いことでしょう。もともと講談社の少女向け(?)のホワイトハートのレーベルで出ていたものが講談社文庫の方で再販されたもの。なぜか新刊はこっちの方が早かったけど。
このシリーズも、デル戦に続きここの掲示板で話題になっているのを見て、食指を動かした次第。さすがにホワイトハートをいきなり自分で買う勇気もなかったので、つてを頼ってとりあえず既刊はじめの五冊を借りて帰省中の暇な時を使って読みました。結局、すべて一日で読破して、続刊を講談社文庫の方でそろえることになりましたが。ものの見事に思うつぼ、というやつでしょう。
話は、仮想古代中国といった風の世界の物語。異界なのに日本とのつながりがあって、突然にそこに引き込まれた一人の人間が一応の中心で進んでいく。ただ、「十二国記」というだけに、他国に関する話もあるわけで、それらが外伝的に織り交ぜられつつ、いかにその巻き込まれた異邦人が成長していくのか、そんな感じ。全体の雰囲気はとにかく重く。作者の性格か、上下巻に分かれることが多いが、そんなときの上巻はただひたすらに重く。一巻目はいたたまれなくなるほど救われない話。でも、ちゃんと最後には救いもあるし、何より出てくる人間の人間らしさが伝わってくるので引き込まれる。個々人の成長もまた楽しみながら読める。国の興亡の史記というよりは人間ドラマといった方がいいのかも。最終的にどう落ち着かせることになるのか、まだ全く見えてこないが、浸って読めるシリーズではある。中国風ということで第二水準にあるのかきわどい漢字が多く出てくるのは、人によっては苦しいかもしれないが、それも雰囲気というもの。惜しむらくは、旦那さんであるところの綾辻行人氏と同様に遅筆であることか。この4月に出た新刊も五年近くの間があったとのことだし、次巻がいつになるのか、のんびり待つより仕方ないようだ。
前述のサイトのおかげで、最近読む本の範囲が少し広がった。表紙と出版レーベルで忌避していたものにも手を出すようになったからか。ものの評判を直に聞けるというのもネットの恩恵の一つであろう。ありがたやー、ありがたや(笑)
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